USBリモートウェイクアップとサスペンド/レジュームのデバッグ
USBリモートウェイクアップ、サスペンド/レジューム失敗、Selective Suspendによる切断、ウェイクイベント取りこぼし、電源管理バグ、レジュームシグナリングをUSBキャプチャでデバッグする方法を解説します。
USBの電源管理バグは診断が難しいです。システム稼働中は完璧に動くデバイスが、アイドル/スリープ/Selective Suspend/ドックスリープ/ノートPCの蓋閉じ/モニタ電源オフのあとでだけ失敗する、ということが多い。検索ワードは USB remote wakeup not working、USB selective suspend disconnect、USB device does not wake computer、USB resume failure、USB suspend resume bug、HID keyboard wake from sleep not working。
Bus Scopeが効くのは、サスペンド/レジュームがアプリエラーだけでなく「バスレベルのイベント」であるからです。知りたいのは「ホストがデバイスをサスペンドしたか」「リモートウェイクアップが有効化されたか」「デバイスがレジュームシグナルを送ったか」「ホストがトラフィックを再開したか」「デバイスがレジュームではなく再列挙したか」です。
リモートウェイクアップとは
リモートウェイクアップは、サスペンド中のUSBデバイスがホストに「通信再開」を要求する仕組みです。よくある例:
- キーボードがスリープ中のデスクトップを起こす
- マウスがアイドル状態のノートPCを起こす
- ドックのボタンがワークステーションを起こす
- バーコードスキャナがキオスクを起こす
- 産業用コントローラがパネルPCを起こす
- HIDセンサが外部イベント後にホストを起こす
リモートウェイクアップは単なる「デバイスに電源が入っている」ではありません。ホストの許可、デバイスの対応表明、機能の有効化、適切なタイミングのレジュームシグナルが揃う必要があります。
よくある症状
リモートウェイクアップ/サスペンドの問題は次のような形で現れます。
- PCがスリープするまで動く
- デバイスがコンピュータを起こさない
- サスペンド直後にシステムが即座に起きる
- レジューム後にデバイス消える
- デバイスが新しいアドレスで再列挙される
- アイドル後にHID入力が抜ける
- Selective Suspend後にシリアルデバイスが送信停止
- スリープ復帰後にオーディオ/カメラデバイスからデータが出ない
- 抜き差ししないとファームウェアが復旧しない
これらはドライバのせいと思われがちですが、キャプチャを見ればファームウェアの電源状態問題が見えることがあります。
ディスクリプタと機能の証拠
コンフィギュレーションディスクリプタはリモートウェイクアップ能力を提示できます。ホストはその機能を有効化/無効化できます。有用なUSB診断トレースは次を答えるべきです。
- デバイスはリモートウェイクアップを提示しているか?
- ホストは
SET_FEATURE(DEVICE_REMOTE_WAKEUP)を送ったか? - その後ホストは機能をクリアしたか?
- アイドル後にサスペンドが発生したか?
- デバイスはレジュームシグナルを送ったか?
- ホストは通常の転送を再開したか?
この事実がなければ、診断は推測の域を出ません。
Selective Suspend
Selective Suspendは、OSがシステム全体をスリープさせずにアイドルUSBデバイスをサスペンドできるようにする仕組みです。電力を節約できる反面、ファームウェアバグを露呈させます。
失敗パターン:
- デバイスが低電力状態に入るがエンドポイント状態を復元しない
- ファームウェアが保留中のInterrupt IN状態を失う
- レジューム後にデバイスが永続的にNAKを返す
- タイムアウト後にホストがデバイスをリセット
- アプリがタイムアウトまたはデバイス消失を見る
- 複合デバイスは1つのインターフェースだけレジュームする
「USB selective suspend random disconnect」と検索されるのは、実態はサスペンド/レジューム失敗なのに「切断」に見えるからです。
レジューム vs 再列挙
スリープ後には大きく2つの結果があります。
- レジューム:同じデバイスが既存コンフィギュレーションで継続
- 再列挙:ホストがデバイスをリセットして再列挙
再列挙は物理的な抜去のあとでは妥当ですが、通常のサスペンド後の場合は疑わしい。アプリがオープンしたハンドル/シリアルポート名/HIDパス/カメラキャプチャセッションを壊すことがあります。
Bus Scopeは、トレースが「通常のレジュームトラフィック」なのか、GET_DESCRIPTOR/SET_ADDRESS/SET_CONFIGURATION を含む「新しい列挙シーケンス」なのかを識別する手助けをします。
ウェイクイベント取りこぼし
デバイスは外部イベントを見ているのにホストが起きない、というケース。原因:
- リモートウェイクアップ非対応
- ホストがリモートウェイクアップを有効化していない
- デバイスがレジュームを早すぎるタイミングで送る
- デバイスがレジュームを遅すぎるタイミングで送る
- ハブがウェイクシグナリングをブロック/誤処理
- BIOS/OSのウェイクポリシーでポートが無効
- デバイスが想定より深いスリープに入る
- イベントがサスペンド完了前に発生
パケットレベルの証拠はOS電源ポリシーに代わるものではありませんが、範囲を絞ります。「デバイスがホストを起こす権限を持っていて、実際に試みたか」。
サスペンド直後の即時ウェイク
反対側の問題も多いです。システムがサスペンドしたのに即座に起きる。USBデバイスは、古い入力/ノイズのある割り込み状態/デバウンスバグ/サスペンドを新規イベント扱いするファームウェアによってこれを起こします。
取得すべき証拠:
- サスペンド直前の最後のInterruptレポート
- ホストがウェイクを有効にしたか
- サスペンドとレジュームの間の時間
- デバイスクラス/インターフェース
- 同一エンドポイントに保留データがあったか
- 毎回サスペンド試行で同じ現象が起きるか
キーボード、マウス、タッチパネル、ゲームコントローラ、独自HIDデバイスで特に多く見られます。
デバッグチェックリスト
次の流れで作業すると、原因に早くたどり着けます。
- 接続時から列挙をキャプチャする
- ディスクリプタのリモートウェイクアップ能力を確認する
- ホストがリモートウェイクアップを有効化したかを確認する
- サスペンド前のアイドル時間を記録する
- サスペンドのタイミングを特定する
- レジュームシグナルまたはホストのレジュームトラフィックを探す
- レジュームと完全な再列挙を区別する
- レジューム後のエンドポイント挙動を確認する
- 同じデバイスをポート直結とハブ経由とで比較する
- サスペンド前とレジューム後のパケット両方を保全する
最終的な診断
USBリモートウェイクアップとサスペンド/レジュームのバグは、電源状態プロトコルの問題です。有用な証拠は、ディスクリプタ能力、ホストの機能選択、サスペンドタイミング、レジュームシグナル、エンドポイント復旧、そして「ホストがレジュームしたか再列挙したか」です。
Bus Scopeはその証拠を可視化するので、「USB wake not working」をドライバ非難ループから脱却させ、具体的な診断にしてくれます。